サンライズ瀬戸を布教したいという話 Part2
サンライズ瀬戸乗車記(1日目)
~前回までのあらすじ~
サンライズ初乗車に心躍る筆者。興奮のあまり1時間以上も前から東京駅に待機していた彼の姿はただの不審者だった!!冷ややかな視線を受けつつも何とかシャワーカードを手に入れ、順調に走り出した列車。車内探訪と晩酌を済ませ、残すはシャワーと就寝のみ。しかし列車はJR東海区間に差し掛かり高速走行を始める。次第に揺れが激しくなる車内で果たして筆者は無事にシャワーを遂行する事が出来るのだろうか。。。
23:21、JR東日本とJR東海の境界となる熱海駅に到着です。
ここで乗務員さんの交代が執り行われます。乗務お疲れ様でした!!
23:30ごろ、列車は伊豆半島の付け根を貫く丹那トンネルを抜け、本格的に静岡県へ突入しました。サンライズは終電の迫る静岡の各駅を次々と通過していきます。
ここで懸念が1つ。
JR東日本(東京~熱海)区間は22:00~23:00ごろの時間帯を走行するため、通勤客も多く東海道線には多数の通勤電車が走っています。サンライズの前には多数の電車が走行しており、高速走行が出来ません。
しかしJR東海(熱海以降)区間は深夜帯を走行するため、サンライズの周囲には走行している電車はほぼありません。サンライズは深夜の静岡県をぶっ飛ばします。
高速走行は車両の揺れにダイレクトに影響します。
つまり現在、車両は過去最高に揺れている。という事です.....!!
この揺れの中シャワーへ入り、就寝するという一大イベントが控えています。。。
00:00、日付を超えて翌日となりました。晩酌での酔いも醒めたので、シャワー室の空き状況の確認ついでに2度目の車内探訪へ出かけました。
そういえば部屋の施錠について紹介するのを忘れていたので、このタイミングで紹介します。各部屋にはテンキー式のカギが存在します。写真は施錠後の状態です。
施錠するときは任意で4ケタの数字を入力し#を押すと施錠が完了します。開錠するときは先ほど入力した4ケタの数字を再入力するだけです。因みにこの施錠方法ですが、部屋の出入りの度に行いますので暗証番号は忘れないようにしてください。
小型の自動販売機。こちらも現金払いのみです。
5号車ノビノビ座席。こちらは頭の部分だけに仕切りがあるタイプの座敷席です。例の感染症の影響もあってか開放タイプの座席の人気はあまり無い模様。
(こちらの席は寝台料金が不要なので格安でサンライズに乗車出来ます。)
サンライズ瀬戸とサンライズ出雲の連結部分。この先はサンライズ出雲です。
(サンライズ瀬戸の利用者でも出雲へ気軽に立ち入って大丈夫です。)
そして例のシャワー室ですが。。。空いていました!急いで(と言っても足音には注意して)部屋へ戻りシャワーカード、着替え、タオル、備え付けの浴衣を持ってシャワー室へ入室します。
シャワー室の手前にある更衣室に入りカギをかけ、服を脱ぎます。写っていませんが写真の左にシャワーカード読み取り機とドライヤーが設置されています。
シャワー室の内部はこんな感じです。
シャンプーとボディソープが備え付けられています。
時間が表示されてされている箇所にズームアップします。
「あと0分00秒」こちらにお湯の出る時間が表示されます。
緑のボタンでお湯を出し、赤のボタンでお湯を止め、下のハンドルをひねる事でお湯を出す量を調整する仕組みです。
それでは満を持してシャワーカード読み取り機に下からカードを差し込みます。
読み取り機「ジーーッ、ジジ」
シャワーカードが吐き出されました。
読み取り機「.....シーン」
筆者「ん??これで読み込まれたのか…..??」
とりあえずシャワー室の表示を確認してみます。
お.....!!シャワールームの表示が「あと6分00秒」に変わっていました。
どうやら問題なく認識されたようです。
(因みにシャワーカードは返却されますので。サンライズ乗車の記念に取っておく事も可能です。筆者は記念として大切に保管しています。)
※注意、シャワーカードを差し込んだ後に更衣室のカギを開けると時間がリセットされてしまいます。シャワーカードを使う時にはタオル、着替え等の忘れ物がないか十分確認してくださいね。
列車の中でシャワーへ入るのは人生初の筆者。シャワー室へ入り恐る恐るSTARTと書かれた緑のボタンを押します。シャワーから丁度よい温度のお湯が丁度よい強さで出てきました。なかなか爽快な気分です。前にシャワーへ入っていた人が丁度よい設定をしていたのでしょうか。
思ったよりも快適なシャワーに驚いていると「あと5分20秒」の表示が目に入ってきました。
危ない危ない......!!お湯は6分間しか出ません。頭と身体を洗うという使命を果たさねばなりません。STOPと書かれた赤のボタンを押すとお湯とカウントダウンが停止しました。備え付けのシャンプーで手際よく頭を洗っていきます。
泡を流し落とし次は身体です。頭と同様に手際よく身体を洗っていきます。
ここまでの列車の揺れは小刻みで踏ん張れば耐えられる程でしたが、足を洗おう片足を上げた瞬間、車体が大きく揺れました。この揺れに耐えきれず筆者はバランスを崩しました。.....恐らくですが、シャワー室にある手すりは揺れた際に掴むために設置されているのでしょう。
その手すりに筆者は腰を強打しました。。。と同時に、
「いっっっ!!!!」声にならない悲鳴を上げました。。。
皆さまシャワーご利用の際は片手は手すりを掴んで離さないよう注意してください。
.....シャワー室で哀れにうずくまる筆者のようになりたくなければ。
痛む腰をかばいつつ身体を洗い終わりました。残り時間は59秒です。
(意外と時間ギリギリでした。。。)
ここで1つ気になった事があり検証してみます。
「お湯を出す量を変える事で制限時間の減り方も変わるのか。」という事です。
ハンドルをひねり、お湯の量を変えてみますが時間の減り方は変わりません。どうやら出す量は関係ないようです。だったらいっぱいお湯を出す方がお得のような気がするのは筆者がケチ臭いからでしょうか。。。
00:20、必死の思いでシャワーを済ませ浴衣に着替えて部屋に戻ります。翌朝の朝焼けが見たいと思い、タイマーを05:30にセットして布団に入り寝る体制に入ります。
見上げると湾曲した窓からは架線が高速で駆け抜け、シャワー室で転倒した原因を作った揺れは心地よい振動へと変わっていました。たまに駅を通過しては駅の明かりが窓に差し込んできます。駅を通過する度に目的地へ着々と向かっている事を実感します。.....そうかこれが夜行列車の醍醐味なのか。。。初乗車ながら旅情に浸ります。ずっとこの感覚を味わっていたいと感じました。
01:11、窓から駅の明かりが差し込んできます。浜松に着いたようです。
静岡県最後の停車駅を見届け、窓のブラインドを下げました。この直後に寝落ちたらしく筆者の記憶はここで途切れています。
サンライズ瀬戸乗車記(2日目)
何のきっかけも無く目が覚めました。
ここはどこ.....??眠い目をこすりながら窓のブラインドを上げます。
始発前の駅が見えます。どうやら通過中の駅は京都駅。現在時刻は04:00ごろのようです。ひと眠りしていた間に列車は関西地方に差し掛かっていました。
この時間なら2度寝も考えましたが、貴重な始発前の駅の風景が見られる事もあり、現時刻をもって起床することにしました。
まだ頭がボーっとしているので顔を洗うために部屋を出ます。
JR西日本(米原以降)区間は案外揺れが少ないのか乗り心地もなかなか良く、ふらつくような事も無く洗面所へ行き、顔を洗います。とてもスッキリしました。
部屋へ戻り、再びボーっと外を眺めます。
4:35、列車は関西の一大ターミナルである大阪駅を通過します。
日中は多くの乗客で賑わう大阪駅がウソのように静まり返っています。これを眺めるためだけに早寝早起きする価値はあります。
(まぁ筆者全く早寝はしてないんですけどね。)
うとうとしつつも夜明け前の京阪神の車窓を眺めます。寝起きからで車窓を眺められるなんてとても贅沢です。しみじみ感じながら薄っすら白んできた空に六甲山系の山々が浮かんできました。
遠くの風景を眺めていると......、知らぬ間に眠りに落ちていました。
流石に3時間そこそこの睡眠時間では眠気に耐えきなかったようです。。。
5:45、2度寝から目覚めました。空まで見渡せる車窓は完全に朝焼けの風景を写しています。1時間ほど眠りこけていたようです。
身体を起こして車窓を見ると見事な田園風景が広がっていました。
これぞトラディショナルジャパン。
現在位置は上郡の周辺で兵庫県と岡山県の県境周辺です。ひと眠りしている合間にサンライズは関西地方を抜けて中国地方に突入しようとしていました。
ここで筆者、サンライズがサンライズたる光景を目にします。夜明けです。
西から太陽が昇り、サンライズは朝日に照らされて車体が黄金色に輝きます。
乗車中のサンライズは全14両あり、前7両がサンライズ瀬戸、後ろ7両がサンライズ出雲です。後方に繋いであるサンライズ出雲がカーブの度に姿を現し車体を輝かせます。
「最高かよ!!!!!!!!!」まだ就寝中の方もいらっしゃいますのでここでも堪えます。
6:20ごろ、自動車内チャイムが流れます。所謂おはよう放送というヤツですが、岡山で下車する乗客をたたき起こすためなのか、かなりの大音量で流れるため筆者はかなり驚きました。自動放送に続いて車掌さんの肉声放送が始まります。岡山駅での乗り換えを案内されています。
この肉声での乗り換え案内が非常に長く、放送開始時は岡山到着まであと10分と案内されるのですが放送終了時では到着まであと5分と案内される事で鉄オタの間では有名です。
(ちなみに筆者は鉄オタではありません。)
岡山駅の手前にある旭川を通過し、サンライズは定刻通り岡山駅に到着しました。正面には岡山駅と高松駅を結ぶマリンライナーが停車しています。
ここ岡山駅ではサンライズ瀬戸とサンライズ出雲がそれぞれの目的地へ向けて切り離しを行うという一大イベントが開催されます。
サンライズ瀬戸は切り離し作業を終えると直ちに出発してしまう事と、切り離し作業には人だかり出来るため密を避けるという観点から連結部分まで行って撮影する事は今回は見送りました。うーん。。。残念。
せめて部屋の近くの乗車口から切り離し箇所の方向へ向けてシャッターを切ります。
人だかりが見えますか??筆者には何も見えない。。。
6:27、サンライズ出雲に別れを告げ、サンライズ瀬戸は一足先に岡山駅を出発しました。瀬戸大橋線に入り四国を目指します。
この後はサンライズ瀬戸の車窓で最大の見どころ、瀬戸大橋の通過が控えています。筆者の部屋は進行方向右側。日の出とは逆の方向を向いているので3号車のミニロビーへ向かいます。ミニロビーは左右に窓が設置されているのでどちら向きの車窓でも対応出来ます。
サンライズがJR西日本とJR四国の境界である児島駅を過ぎ、瀬戸大橋の手前にある鷲羽山トンネルに入りました。トンネルを抜けると走行音が明らかに変化し、溢れんばかりの光がミニロビーを照らします。
6:55ごろ、列車は瀬戸大橋に入りました。
朝日に照らされた瀬戸内海と瀬戸内の島々が視界いっぱいに広がります。あまりの絶景に筆者感極まります。
「最高かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
他の方もミニロビーにいらっしゃいますのでグッと堪えます。
絶景を眺めながら昨日購入していた缶コーヒーを開け、素晴らしすぎる朝を過ごします。ミニロビーにいる他の方も写真を撮るなどしつつ思い思いに瀬戸大橋からの景色を楽しまれている様子でした。
このように景色が最高な瀬戸大橋ですが10分足らずで通過してしまいます。徐々に坂出の工場群が見えてきました。いよいよ四国に上陸です。
7:09、列車は四国最初の停車駅である坂出に到着しました。この坂出駅のメロディーには名曲「瀬戸の花嫁」が用いられています。JR四国も大変粋な演出をしてくれます。
余談ですが車内放送や駅メロディーに興味を持つと「いい日旅立ち」「瀬戸の花嫁」など往年の名曲に詳しくなれる。。。ような気がしています。
7:27、高松駅6番線に到着しました。サンライズはここで30分ほど停車した後、来た道を坂出まで戻り予讃線と土讃線を経て琴平駅へ向かう予定です。
遅延が発生した際には琴平駅までの運転は打ち切られ、高松駅止まりになる事が多いのですが今回は定刻通り。問題無く琴平駅まで向かうそうです。
高松駅で少々の時間があるのでホームに降ります。
うどん県を自称する県だけあって駅名標にも「さぬきうどん駅」を併記する用意周到さ。手が込んでいると言わざるを得ません。
ここまで朝ごはんを食べていない筆者、うどんの文字を見ると急にお腹が空いてきました。高松駅構内にある連絡船うどんを食べに行きます。
かつて瀬戸大橋が無いころ、岡山と高松を結ぶ交通手段は船でした。宇高連絡船と呼ばれ今ではなかなかイメージしにくいですが国鉄(JR)が運航を行っていました。(ちなみに広島県の宮島口と宮島では、今でもJRが宮島フェリーという名前で船を運行しています。)宇高連絡船が就航していた当時、手軽にうどんを食べられるようにと船内に存在していたお店が宇高連絡船廃止後の今、駅構内の店舗へと姿を変え、当時の味を現代へ伝えています。
のはずだったのですが。。。なんと休業中。
朝ごはんを食いっぱぐれましたがこればかりは仕方ありません。当初の予定では琴平到着後に名物こんぴらうどんを食べるつもりだったので、耐え忍ぶことにします。
おとなしく車内に戻って外の景色を眺めます。隣のホームには部活動でこれから通学する多くの学生が列車を待っています。なんだか懐かしい感じがします。
08:02、サンライズは進行方向を変え、先ほどまで来た道を戻りながら琴平までの延長運転を始めました。讃岐平野を早くもなく遅くもない速度で通り過ぎていきます。昨夜の寝台列車のワクワク感とは異なり、穏やかでゆったりとした時間が流れていきます。
8:37ごろ、琴平到着のアナウンスが流れ始めました。長いようで短いサンライズの旅もそろそろ終わりを迎えます。
琴平駅の手前で琴電琴平線と交差します。琴平を観光した後は琴電に乗って高松へ向かう予定です。
楽しい旅をありがとうございました!!
琴平駅に停車するサンライズの雄姿をカメラに収めます。行き先表示の方向幕は既に回送を表示していました。この後は高松駅まで回送される予定です。
琴平駅は長い編成の列車が止まるホームを有していないので、7両編成のサンライズ瀬戸はホームをギリギリまで使います。ホームほとんどを埋めてしまうサンライズはとても迫力ある姿をしています。
ここでサンライズの旅は終了です。素晴らしい体験をさせてくれたサンライズの旅の余韻に浸りながら乗車券と寝台券は記念に持って帰ろうと思い、有人改札で持ちかえりたいと申し出ようとしたところ。。。何も言われず駅員さんは無効印を押してくださいました。
乗車券と寝台券を記念で持って帰りたい人があまりに多いためか、どうやら何も聞かれずとも無効印を押している様子でした。
最後に琴平駅の風情ある駅舎の外観を紹介して終わろうと思います。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
さいごに
ここまで乗車記を読んでいただいた皆さまへ筆者からお伝えしたい事がございます。
Part1の冒頭と同じ内容になってしまいますが、サンライズをはじめとする寝台列車は日本から徐々に姿を消しているのが現状です。その理由の多くが利用者の減少によるものです。近年では航空機や高速バスなど便利で格安の競争相手が増え、寝台列車が登場したころに比べて選択肢は大変多いものとなりました。その時代の流れに寝台列車は取り残されてしまったのです。
筆者は時代の流れに取り残された不便なモノをあえて無理に残すべきとは思いません。
ですが移動手段の選択肢が増えた現代において、あえて寝台列車を選択するとどのような経験が得られるのか。それを乗車記として筆者が感じた事をすべて綴ろうと思い作成した次第です。
この乗車記を読んだ皆さまに寝台列車の旅の良さが伝わり、”あえて”寝台列車に乗ってみようと思ってもらえましたら、筆者、これ以上の喜びはございません。
(時期は未定ですがサンライズ出雲についても紹介したいと思っています。)